灯台街道 La Route des Phares

概要

フランスの西部、ブルターニュ地方は地形的に小さな島々や岩礁が多く、海流が激しき変化し複雑にぶつかり合い、干満差が大きい。船乗りからは恐れられ、座礁する船も少なくない。
加えて、非常に天気が変わりやすく、一日のうちに四季があるといわれている。晴れていたと思えば、瞬く間に暴風雨になったりする。
これだけの厳しい環境に加え、古くから交通の要衝だったので、灯りによる道しるべが必要で、古くから岬に修道院に立て、修道士によって一晩中火をともしていた。
近代になって灯台の建設が進み、船乗りの命綱のように灯台が連なって建てられた。やがて電気が通り、現在のように自動化が進んでいった。
現在、ブルターニュ地方で現役で稼働している灯台は61基ある。そのうちの12の灯台が歴史的記念建造物に指定されている。
自動化されてもそれぞれの灯台には灯台守が常駐している。
船乗りたちによって、灯台はその労働条件の厳しさに応じて3つの呼び名で分けられている。
「地獄」は海の中に立つ灯台、
「煉獄」は島に立つ灯台、
「天国」は陸に立つ灯台

ブルターニュのシンボルとも言える灯台はブルターニュ全土に点在し、船の安全を守っていますが、中でも西の果てにあって、「地の果て」という名称のフィニステール県の北部ブリニョガンからブレストまでは、「灯台の道」といわれているほど灯台が集中している地域である。

ポントゥヴァル灯台 Pontusval
ヴィエルジェ島灯台 Phare de l'lle Vierge
トレジアン灯台 Phare de Trezien
ケルモルヴァン灯台 Phare de Kermorvan
サン・マティュー灯台 Saint-Mathieu
プティ・ミヌー灯台 Phare de Petit-Minou
トゥランゲ灯台 Phare de Toulinguet
エクミュール灯台 Phare d'Eckmuhl

ウェサン島 Ile d'Ouessant
スティフ灯台Le Phare du Stiff ウェサン島
クレアック灯台 Phare de Creac’h ウェサン島
ニヴィディック灯台 Phare de Nividic ウェサン島
ジュマン灯台 Phare de Jument ウェサン島
ケレオンの灯台 Phare de la Kereon ウェサン島

コルドゥアン灯台 Phare de Cordouan (ボルドー)

ポントゥヴァル灯台 Phare de Pontusval

(1869年建造)
Pontusval灯台は、ブレストから北東へ50㎞に位置するブリニョガンBrignoganの町の北側にある。
ブリニョガン湾内へ入る入口を示しており多くの船舶を誘導している。高さは18mの灯台は花崗岩でできている。あり、明かりの届く範囲は10海里である。12秒ごとに3回の白い閃光を発している。

ヴィエルジェ島の灯台 Phare de l'lle Vierge

(1902年建造)
ブレストから北へ約20㎞進むと、プルゲルノー Plouguerneauという小さな町で着く。
そこから先の海辺まで1km足らず。岬の先端から目の前に灯台の立つヴィエルジェ島がある。高さ82.5m、ヨーロッパで最も高い灯台とされる。内部は365段のらせん階段があり、最上部へ出ることができる。

トレジアン灯台 Phare de Trezien

(1865年建造)
ブルターニュの西端部分は暗礁が多く、座礁する海難事故も少なくない。
岩礁のある浅瀬を避けてサンマチュー岬まで南下するフール水路Le Chnal du Four を安全に航海するために建造した灯台である。
花崗岩でできたこのトレジアン灯台は、海岸から500mも内陸に入ったところに建てら れている。内陸部から船を誘導しているのが特徴的なところである。
ドーバー海峡と大西洋の海水がぶつかって混じり合うコルセン岬La Pointe du Corsenからもほど近い場所にある。

ケルモルヴァン灯台 Kermorvan

(1849年建造)
ブレストから西へ20kmほどで西端のル・コンケ Le Conquetの漁港に着く。
深い入り江になっていて、沖にはコジマが点在している。周辺には暗礁も多い。
近海で漁船がカニ、エイ、カレイ、イセエビを水揚げする。
沖合のウェサン島、モレーヌ島へのフェリーの発着地ともなっている。
町はずれの岩礁の連なる海岸の先にケルモルヴァン灯台が立つ。
高さ20、30mあり、1849年に建造されたもの。

サン・マチュー灯台Phare de Saint Mathieu

サン・マチュー岬に立つ。
ブルターニュ地方の最大都市ブレストの湾口に入ってくる船に航路を示している。
ブレスト港へはブルターニュ半島の先端イロワーズ海( Mer d'Iroise)から入ってくるが、その先端がサン・マチュー岬である。
ブレスト港は重要であるし、海軍と深いつながりのある港でもある。
広大な入り江に面したブレストは、中世から貿易港として繁栄していたばかりか、重要なフランス海軍の港でもある。
この辺りは岩礁が複雑に入り組んでいて、たびたび海難事故が起きていたため、船乗りからも恐れられていた。
船乗りたちがエジプトから持ち帰った聖マタイ(フランス語でサンマチュー)の頭蓋を祀るため、僧侶タンギーが6世紀、この地に最初に修道院が建立したと伝えられている。
その境界のあったところに国は1157年に修道院を建て、修道士たちによって修道院の塔の上で一晩中火を焚いて灯台の役割を担っていた。
600年もの間続けられていたのち、1835年にサン・マチュー灯台が建てられた。修道院は廃墟となっている。
その後、1937年に照明は電化され、1996年には自動化されている。
高さ37mの灯台は一般公開されている。163段の階段で昇ると、一面素晴らしい眺望が広がる。晴れたときにはブレスト湾口から始まり、クロゾン岬、ラ岬Pointe du raz、サン島、ピエール・ノワールの道、ベニゲ島、モレーヌ島、ウエサン島Ile d'Ouessanなど50km先まで見渡すことができる。
灯台と修道院の廃墟を挟んで反対側に灯台より低い塔が立っている。1906年に建てられた通信塔Semaphoreである。
この近くには宿泊施設もある。オステリー・ドゥ・ラ・ポワント・サンマチュー

プティ・ミヌー灯台 Phare de Petit-Minou

ブレスト市内から西へ約5㎞ほどに位置するプティ・ミヌー岬に突き出た岩に立っている。高さ26mの円筒形の塔はブレスト港への誘導の役目を担っている。
1980年代後半から自動化されている。
週末のみ見学ができる。

トゥランゲ灯台 Toulinguet

ブレスト湾をはさんでブレストと反対の南側のクロゾン半島 Crozonの西端、クロゾンの町から西へ10㎞ほど、カマルCamaretの町を過ぎて西側に位置するトゥランゲ岬 Pointe du Toulinguetにある。灯台は19世紀半ばに建設されたもの。
西に沈むサンセットがすばらしいポイントである。

エクミュール灯台 Phare d'Eckmuhl

(1897年建造)
カンペール Quimperの南東約40㎞ほどのパンマールの岬Pointe de Penmarchに立つ。
新旧2つの灯台が並んで建っている。
1835年に建造された灯台が十分な役割をはたしていなかったため、1882年に新たに建造することが決められた。
新しい灯台は、当時のブルターニュの侯爵Louis-Nicolas Davoutの娘Adelaide-Louise d'Eckmuhl de Blocqueville (1815-1892)の長年の希望により1892年に彼女の遺産で建てられることとなり着工、1897年に完成に至った。
新灯台は高さ65m、屋根がまるで真珠の王冠のようだ。内部も美しいらせん階段があり、307段の途中に5つの張り出し窓が設けてある。
旧灯台は現在展示館になっている。

ウェサン島 Ile d'Ouessant

イギリス海峡の西の入り口の南端に位置し、北側のシリー諸島と対をなしている。
この周辺は暗礁が多く、大西洋とドーバー海峡の潮流がぶつかり合うところで、10ノットを超す潮流がある航海の難所である。「ウェサン島を見る者は己が血を見、サン島を見る者は己が終わりを見る」という古いブルトン語のことわざがある。船乗りから恐れられている海域である。
ウェサン島は東西約 8 km、南北約 3 km、面積約 15 km2、標高は最高 61 m。
人口は約900人。
小さな島ながら、観光客は多く、人口にもまして住居の3分の1はコンドミニアムや別荘になっている。多くは灯台写真家たち。
荒々しい波しぶきの中に立ち続ける灯台の姿のすごさは写真家にとってたまらないアングルである。国内外からたくさんの写真家がこの島を訪れている。

ウェサン島の灯台

スティフ灯台Le Phare du Stiff ウェサン島
クレアック灯台(Creac'h)(1863年完成) ウェサン島
ニヴィディック灯台(1936年)ウェサン島
ジュマン灯台La Jument ウェサン島
ケレオン灯台 Phare de la Kereon ウェサン島

ウェサン島行きの船は、ル・コンケ Le Conquetからの直通便で約1時間
夏季のシーズン中はブレストからも出ている。
天候によって、ものすごく船が揺れる。

スティフ灯台Le Phare du Stiff

(1700年建造)
高さ32.4mの2本の白い円錐形の塔が立つ。
建築家のヴォーバンVauban の設計によるもので、1695に着工し、1700年に完成し 現在も現役のブルターニュ最古の灯台である。
1717年までは木炭と石炭を使用していたが、以後1780年まで、オイルランプが使われるようになり、同時に照明もより明るい反射装置Tourtille-Sangrainを使用するようになった。
1957年に電化され、1993年に自動化された。
さらに1978年に、イギリス海峡への航行の安全強化のためにレーダータワーが灯台に隣接して建てられている。

灯台へは4月から10月の夏季シーズンの間、一般公開されている。
104段の階段を昇って屋上まで登ることができる。

クレアック灯台(Creac’h)

(1863年建造)
クレアック灯台は、アルモリック地方自然公園(Parc naturel regional d’Armorique)内にある。この灯台は、フランスの歴史的建造物となっている。
1859年に灯台の建設の着工、1863年に完成した。
ヨーロッパで最も明るい灯台の1つで、光達距離が59kmもあり、8つのビームから光信号を放射している。クレネルレンズが使われた。
発明者は、物理学者のオーギュスタン・ジャン・クレネル。
1855年のパリ万博では国力を示す最先端技術として展示され、世界中を驚かせた。
レンズの表面に切れ込みを入れ薄くても光を屈折させ、一定方向に送ることができる。このレンズの発明で、より明るく、より遠くに灯りを届けることができるようになった。
1888年に電化され、1901年に自動化された。
灯台に隣接して灯台博物館と標識博物館がある。

ニヴィディック灯台 Phare de Nividic

(1936年建造)
ジュマン灯台の3㎞北に位置する。
高さ35.55 m。
灯台は1912年から1936年にかけて建設された。
岩礁が多く、建設には困難を極めた。
海上にある、いわゆる地獄灯台だったが、比較的陸地に近いため、人や物資を運搬するため、陸地との間に2本の柱を立て、灯台との間にロープウエイを架設している。
当初より電気の光が点灯していた。
戦争中に放棄された後、1950年代初頭に修復され、数回改装され現在に至っている。

ジュマン灯台 Phare de la Jument

(1911年建造)
ウェサン島の南西の岩礁の先の小さな岩礁の上に立てられている。
高さ47m、1904年に着工し、1911年に完成。
このあたりの海域は潮の流れが激しいことが有名で、灯台が波にのまれて見えなくなってしまっている、「ウェサン島を見る者は己の血を見る、モレーヌ島を見る者は己の苦痛を見る、サン島を見る者は己の終わりを見る」ということわざが生まれるほど航海は困難極まるものとなっていた。
もともとこの岩礁に何隻もの船が乗り上げ多くの難破船が発生していた。そこで灯台の建設を決め、干潮時に岩が顔を出したタイミングを狙って石を積み上げ、7年もの歳月をかけて完成させた。
1991年から自動化されているが、灯台守は常駐している。
灯台をすっぽり覆うような大きな波が打ち寄せるところは写真家の絶好のシャッターチャンスとなり、多くの灯台写真家がこの島に滞在している。
1989年嵐で巨大な波が打ち付ける中、ジャン・ギシャールJean Guichardというフランスの写真家がヘリから空撮した写真が世界的に有名になった。ヘリの音を聞いて灯台守が扉を開けた瞬間を捉えたもので、多くの写真家が荒波の中の灯台の写真を狙っている。

ケレオン灯台 Phare de la Kereon

(1916年建造) ウェサン島の南東3kmの沖に立つ。高さ48m。
1907年に着工し、1916年に完成している。1972年に2 台の風力タービンによる発電機で電化されるまで石油を使用を使用していた。
2004年に自動化されているが、荒れる波の中の孤立した「地獄」の灯台である。
フランスの歴史的建造物に指定されている。

ボルドー

コルドゥアン灯台 Phare de Cordouan

ボルドー市内からジロンドGironde河の流れに沿って下ると、95㎞で河口に出る。
その河口から大西洋を望むと、7 km先の海の中に灯台が立つ。
1548年より建設され1618年に完成したもの。フランスで最も古い灯台といわれ、海のベルサイユと呼ばれていて、現在はフランスの歴史的建造物に指定されている。
ジロンド河の河口付近はしばしば海が荒れることから危険度が高く、船乗りから海の墓地と呼ばれる程だった。
ジロンド河口の安全化を図るために、河口のコルドゥアン小島に建造物を作り、礼拝堂として隠修士たちが船乗りたちのために火を灯し、航行する船の無事を祈っていたのが始まりとされる。
その後、ルイ14世の命により修復が行われた時代がある。高さ68mに達するものになった。
当時の光学や建築の粋が集められた。照明にはレンズが使われている。
内部は311段のらせん階段で7つのフロアに区切られている。豪華な大理石でできており、チャペルの窓にはステンドグラスがはめ込まれている。
1948年に電化された灯台は2006年からは自動化されている。

年間約2万人の観光客が訪れるという人気がある。
干潮時に船で訪れることが可能。
またはメシェ=シュル=ジロンドの4月から11月コルドゥアン灯台ツアー、
夏季にはPointe de Graveから4時間のツアーがあり、灯台を訪れることができる。ただし、潮の干満や気象条件に応じて、毎日変更される
ルヴェルドンシュールメール Le Verdon-sur-Merと対岸のキャップ・ロワイヤンCap Royanを結ぶ船もある。
キャップ・ロワイヤルにはメドック格付け2級のワインのシャトーがあるが、 ラベルにコルドゥアン灯台がデザインされている。

公式サイト www.phare-de-cordouan.fr















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